相続で争族?になりそうな方へ 親子・きょうだいの話

もうすぐ開業して1年になります。

おかげさまで様々な方のご支援があり、ここまで来ることができました。

まだ1年ですが「行政書士の仕事って奥が深いな」と感じずにはいられません。

行政書士の仕事は許認可業務、相続・遺言といった権利義務など多岐に渡るのですが、1つ言えるのは
ネットに答えが載っていない問題にいかに対応できるか、が仕事であるということです。

法律的な解釈や、業務を遂行するために論理的に考えることももちろん大事なのですが、
そこに「人」がいる限り「感情」抜きには話が進みません

ご相談の多くは
■ トラブルになりそう(トラブルにならないように)、
■ 困っているけれど先延ばしにしている
■ 誰にどう相談すればいいのかわからない
といった状況が大半です。

もう争いが起きているのであれば弁護士に相談ですが、
そこまでは至っていない、もしくは何かをしようとしているときに気になることがある場合は
行政書士はしっかりお話を伺い、対応について一緒に考えることができます。

ここで「一緒に考える」のがポイントです。

「法律にはこう書いています」
「判例ではこういう結果が出ています」
というだけでは気持ち的に安心できなかったり、よく理解ができなかったりします。

ましてや家族間のことになると、それはそれは”感情や勘定”が渦巻きます。

それぞれの立場でそれぞれの気持ちで言いたいことが出てきます。

誰だってわざわざケンカしたくはないですし、日本人の傾向として「穏便に事を済ませたい」。
それを実現するためには、第三者が入って話をお聞きするのは結果として良いことが多いと感じます。

以前、相続のご相談がありました。
高齢のお母様と60代の息子と娘で、お母様の財産を巡って3人が疑心暗鬼になってしまっている状況でした。
ご依頼人はお母様ですので、お母様の立場に立って検討するのが第一なのですが、
だからといってお母様の権利だけを主張しても本当にお母様が望む状態になるとは限りません
法的な手続きが完了すればいい、というのであれば別ですが。

私は家族の抱える悩みに厚かましくも一歩踏み込み、じっくりお話をお伺いすることを続けました。

最初は、いきなり出てきた行政書士にお子さんも当惑されて、そっちがその気ならこっちだって!と気持ち的に落ち着かなくなられていたのですが、私は代理人(弁護士)ではありませんのでひたすらにお子さんの気持ちをお聞きすることに徹しました

こちらからは何も話さずにとにかく耳を傾ける。
すると、ポロ、ポロ、と胸の内を語ってくださるようになりました。

元々が紳士的な方でしたのでめちゃくちゃなことは言いません。

ただ、垣間見えたのは「僕ばかり損をしている」

お金の問題もあるとは思いますが1番は「母親(家族が)が自分のことをどう見ているか」ではなかろうかと感じました。
「これまで自分なりに自分の家族と親のためにやってきたのに、財産はやらない(これだけ)なんて今までの自分のしてきたことは何だったんだ?」

いくつになっても親子の関係とはいろんなことが起きるんですね。

母親の愛情表現の大切さを学ばせていただいた一件となりました。
自分への戒めでもあります。
今回お付き合いいただいたご家族には感謝しています。

結果的には遺言書を作成することにはなりませんでしたが、これを機に(第3者が入ったことで)きょうだいの仲が
良くなり、冷静に話ができるようになり、お母様も円満な老後が過ごされることを願うのみです。

相続は〇〇家の問題ですが、現代は家督相続の価値観と民法で定められた法定相続人に平等に分けるという価値観が交じり合っています。

〇〇家の長男が色々な問題に対応していく
  ↓
はずが長男は県外や海外にいるため実質的に下のきょだいが親の身の回りの世話や細々としたお手伝いをしている
  ↓
しかし、長男は長男で大事な場面では駆り出されたり意見を求められたりとゆくゆくは継ぐ者としての責任感を持っている
  ↓
さらにそれぞれのきょうだいの配偶者もおのずと参加していく
  ↓
長男の嫁と実の娘とどちらが母親にとって居心地良いかはまた別の話

と、挙げるとキリがないほど状況は複雑になっていきます。

しかし、私が様々な方々のお話を聴くと根底に
■ 信頼
■ 感謝
■ 謝罪

がスムーズにされている家族は円満になると感じています。

素直に「ありがとう」「ごめんね」「助かっているよ」
と一言あるかないかだけで「感情」というのは落ち着いていきます。

これ、自分に言い聞かせてます(笑)

花を育みたいです

親が偉いとか、きょうだいの一番上が偉いとか関係ありません。
そういった「対等」を民法では言いたいのだろうな、と独断で解釈しています(笑)

感情があるからこそ、悩むし苦しむし、人生がドラマティックになります。

決して家族みんなが円満で仲良しであるべき、とも思いません。
どうしても相容れられないことがあったり、価値観があまりにも違いすぎたり。

でも、家族というのは感情的になって一時は憎んでも家族を続けられるという不思議な関係でもあります。

みなさん口を揃えておっしゃるのが
「こんな家庭の変なところ見せるのが恥ずかしいのですが・・・」
まったく気にされないでください。
みな同じように悩んでいます。

行政書士は「戦うこと」前提ではありません。
トラブルを起こさないようにあれやこれやと考えを巡らせる職業です。
それに報酬をいただいております。

一人で悩んで苦しいな、と思っている方は遠慮なく相談してください。
家族や当事者だけで話が進まないときには、第三者が入ることで冷静になれたり、過去に固執するのではなく未来のために話すことができるようになります。

この記事を書いた人

松岡 いずみ

長崎県長崎市の行政書士法人シトラス代表社員。
主な業務は建設業・廃棄物・補助金・相続・離婚・内容証明。
補助金の採択率は8割強。
行政書士の他に宅建士・2種電工・FP2級などの資格を取得。
IoTやDXに力を入れており、長崎県で初の経産省DX認定を取得。
マイブームはStable Diffusionでの画像生成とRPAのフロー簡素化。